花もて語れ

最近読んだ中で一番薦めたいのはどれ?

と、きかれたら真っ先に答えられます。

片山ユキヲ先生の「花もて語れ」!! これです。

花もて語れ 1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

花もて語れ 1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

花もて語れ 4 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

花もて語れ 4 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

朗読というマイナーなものを題材に自分に自信のない佐倉ハナが

朗読の世界へ飛び込んでいく姿を描いています。

現在4巻まで刊行されていますが、これまで月刊スピリッツで連載されていた

本作は「アイアムアヒーロー」・「闇金ウシジマ君」・「とめはねっ!」

新クロサギ」などを掲載している週間スピリッツに移動し、

留まることを知らない、現在ノリにのっている作品です。


幼い頃に両親をなくした佐倉ハナは小学生時代も

友達ができず、いつも一人で空を眺めて空想を楽しむ子でした。

ある日、小学校のクラスの学芸会で「ブレーメンの音楽隊」を

演じることになり、ハナは自分がやりたい役などなく途方にくれていました。

その日もいつもの草っパラで一人で空を眺めていると空模様が怪しくなり

雨が降り出します。

目の前にはテント。

耳を立てればブレーメンの音楽隊の文章を呼んでいる声がするのです。


声の主はハナの通う小学校の教育実習としてくる予定の折口先生。

会話をしていく内に折口先生は花のある才能に気がつくのです。


「視座」または視点の転換とも呼ばれる朗読における基本のテクニックである。

これは、折口先生いわく「登場人物になりきるために。その人物がどんな位置や距離から、あるいはどんな立場で感じているかを、正確に理解して読む。」

ということらしいです。

どうやら空を見上げて空想に浸っていたハナはその力が

小学生ながらにして身についたようです。



翌日、学校ではブレーメンの音楽隊の役決めを行うも

ナレーションが残り、ハナも役が決まらず

(というより内気すぎるため自己主張ができなかったのかも)

結局ハナは流されるがままにナレーション役に。

草っパラでは相変わらず折口先生はいるようでハナの話を聞くと大喜び。

こいつ、結局教育実習サボりました。



「君にピッタリじゃないかッ!!!」

しかし、みんなの前で声をだすのが怖いハナは

「自分にはナレーションはできない」と弱気に。

しかし


「赤ちゃんの泣き声はどうしてみんなによく届くか、わかるかい?」
「伝えたい気持ちが強いからだよ。」

ひたすら勇気付ける折口先生はきっと良い先生になると思う。

そして、そこからナレーションを朗読の技術をもってして

ハナに教えていく折口先生。

いいから教育実(ry

教えていく過程でもハナの視点の転換、つまり物語の中に入りこむ力

の片鱗を見せ付けられます。



「ひどい…」(ブレーメンの音楽隊、ロバがイヌに向ける言葉にて)

そして本番を迎える。

ハナは頭真っ白。さらに大勢の客をみてガクブル状態。

折口先生は教育実習をすっぽかした学校に堂々と姿を現し


「君ならできる」

ドヤ顔ハナを励まします。

そしてハナは決心して遂にナレーションとして、この漫画の

メインである初の朗読作品「ブレーメンの音楽隊」を読み出すのです。

そして、のちの巻から朗読シーンの描写として常になるこのようなコマ。



読み手と物語の登場人物が同時に描かれ、コマ内には物語の文章。

圧巻です。読み手の表情と物語の展開がマッチし、

何かがこみ上げてきます。ブレーメンはあまりこのようなコマはありませんが

続刊である2巻・3巻・4巻では見開きぶち抜きどんとこい状態。


もちろんこの学芸会

大成功です。

そしてこれはハナが22歳になるまでの人生において

一番、華ばなしい思い出になるのです。

物語はこの後月日がたちハナ22歳、社会人一年目として上京し

再び朗読に出会うことで動き出します。


というわけで(自分の)時間があれば次の宮沢賢治「やまなし」編、

上げられたらなと思います。